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02/23:不妊医療とインターネット
2月23日のasahi.com:電網最前線で次のような記事が掲載されていました。

ネットで肥大化、生命「市場」
米国の不妊治療情報事情
インターナショナル・ファーティリティ・センター
http://www.asahi.com/paper/media/misc99/misc990223.html
 この記事のように不妊治療としての卵子の提供や代理母の斡旋がインターネットで行われています。これらの治療は国内では禁止されているけれども、日本語化されたホームページもあり、卵子の提供や代理母をもとめて渡米を呼びかけています。

 一方、男性の不妊治療としての精子の提供は、国内でも治療として認められています。これには夫の精子を用いた配偶者間人工授精(artifical insemination with husband's semen 以下 AIH)と、夫以外の男性から精子の提供を受ける非配偶者間人工授精(artifical insemination with donor's semen 以下 AID)があります。後者のAIDは遺伝的には夫とつながりがない子供が出来る事はおわかりだと思います。

 このAIDを行う際に必要な精子のバンクのサイトが国内あることを最近知りました。前述の卵子提供を斡旋するサイトは海外で、精子提供は国内サイトと、一応現実の世界の約束を守っているとは言えるのですが、実際にはどちらも全く同じように日本から閲覧できます。

 国内の不妊治療を行っていると記載された産婦人科のホームページをいくつか見て回りました。不妊治療を行っている産婦人科医の間でもまだ多くの医療機関ではAIDは行わないという記述が時折見られました。

 こういった不妊治療の多くは保険診療で認められておらず自由診療となることが多いです。自由診療とは、表現はよくないかもしれませんが”保険医療のほころびかけた部分”とでも言うのでしょうか。これらの医療には、実質的にホームページは広告として利用されている、という見方は出来ないでしょうか。


 ところで不妊治療について私も詳細を知りませんが、男性の不妊治療としての精子の提供は国内で許されていて、女性の不妊治療としての同等の卵子の提供は国内で認められていないのことが、そもそもおかしいのではないかと思っていました。

 "AID"というキーワードで検索してみると、前述の私と同じ考えを持っている人がいることが分かりました。しかし産婦人科の医師からは精子提供と卵子提供ではずいぶん意味が違うと言う意見も合わせて掲載されており、世論としてはまだ賛否両論といったところでしょうか。

 NHK BS1 地球法廷:生命操作 www.nhk.or.jp/forum/life/thema-b.htm


 現実の世界の制約を飛び越えて情報を提供してくれるインターネットは、不妊症で悩む夫婦に福音をもたらすと言えます。

 これらの治療が十分なインフォームドコンセントが行われた上で行われるのなら、世論としてやがて認められるようになるだろうと思います。しかし今日の現実の日本の医療で認められていない医療の斡旋が、表現の自由とはいえインターネットなら許されるのかというと、完全には疑問の念を拭いきれません。

 インターネット上で公開される医療情報は、営利第一主義ではなく患者のQOLの向上に結びつくモノでなくてはなりません。今後も人の幸福をもたらす情報流通がインターネットで繰り広げられることを期待します。



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