第19回近畿外来小児科学研究会:開催日 2010-11-14
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特別講演

演題
小児の血尿の診断とその原因 - 非腎炎性血尿の鑑別の重要性 -
演者
竹村 司
所属
近畿大学医学部小児科学教室
抄録

 学校あるいは発育検診での検尿の普及により、幼少 〜 学童早期から尿異常者をスクリーニングすることが可能となった。慢性糸球体腎炎の診断は、あくまでも腎生検による組織診断によってなされるものであり、腎生検が施行されていないものや、早急な腎生検の必要性の少ない症例では、”糸球体腎炎の疑い”、あるいは、”無症候性血尿”と診断されていることが多い。小児の血尿の原因としては成人でのそれと同様に、慢性糸球体腎炎が重要な疾患である。しかし、血尿の原因は多様であり、腎炎以外にもいくつかの考慮すべき疾患がある。小児の腎炎以外の持続する血尿の原因で比較的よく遭遇するものとして、良性家族性血尿、特発性高カルシウム尿症、ナットクラッカー症候群がある。良性家族性血尿は、糸球体基底膜を構成する IV 型コラーゲンの量的産生異常に基づく非薄な糸球体基底膜が構築されることが原因であり、常染色体優性遺伝を示すことが多い。腎機能の予後は良好であり、厳密な運動制限や特別な食事療法などは不要である。特発性高カルシウム尿症は、小児期での尿路結石と密接な関係があり、比較的低年齢での血尿が発見の動機となる。生活管理は、積極的な運動と飲水が必要である。ナットクラッカー症候群(現象)とは、腹部大動脈と上腸間膜動脈の間隙が狭小化された時、その間を走行する左腎静脈が狭窄され、腎内静脈圧が上昇し、血尿が出現する疾患である。痩せ型の体質のものに頻度が高く、若年者での報告例が多い。発見動機の一つとして、スポーツなどの後に、肉眼的血尿発作で発見される。近年、ナットクラッカー症候群患児の中で、起立性低血圧や慢性疲労症候群と類似した症状を訴え、不登校となるケースがあることが我々の検討で明らかとなった。良性家族性血尿や高カルシウム尿症の診断時に大切なことは、問診の際に、血縁者に尿異常を指摘された者がいないかどうか、また尿路結石患者はどうかなどの家族歴を聴取することである。これらの糸球体腎炎以外の血尿の原因を明らかにすることは、子ども達に不必要な運動制限や生活管理などを回避させることになり、小児の QOL の改善、将来の夢の実現に貢献することになる。


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