第2回近畿外来小児科学研究会・一般演題抄録
演題
大阪府下における麻疹調査について
演者
○砂川富正1)2)3)、安井良則1)4)、木田一裕1)5)、奥野良信1)6)
所属
1) 大阪府感染症流行予測調査会
2) 国立感染症研究所感染症情報センター
3) 横浜検疫所
4) 堺市保健所
5) 大阪府健康福祉部感染症難病対策課
6) 大阪府公衆衛生研究所
抄録
背景 昨年の本学会において我々は、大阪府における麻疹調査・対策の必要性を提言し、平成13年9月までに@大阪府感染症流行予測調査会による一昨年から昨年に至る大阪府内での麻疹流行の疫学調査、A大阪府堺市による麻疹ワクチンに関する保護者のKAP(知識、態度、実際の行動)調査を実施した。
方法 @に関して、平成11(1999)年12月より平成12(2000)年10月までの期間を麻疹流行期間とし、193の定点医療機関および533の入院可能医療機関に後方視的に麻疹症例の報告を求め、麻疹流行におけるワクチンの有効性を検証するために出生年グループ別の症例対照研究を行った。
Aに関して、平成13年6〜8月の期間に堺市で実施された1歳6カ月児健診(対象者1,467名)、3歳児健診(同1,403名)時に保護者へのアンケート調査を行い、予防接種歴と生活形態、保護者年齢等について有意水準を計算した。
結果 @大阪府下全域より4,564例の麻疹症例が報告され、実数はこの1.5〜2.0倍と推定した。15.1%が抗麻疹IgM抗体を測定した。77%が7歳以下であり、245例の成人麻疹が報告された。期間内に死亡例報告はなく(前後に2例あり)、9例の脳炎が報告された。ワクチンの有効率は出生年1995−1999年、1990−1994年、1985−1989年のグループでそれぞれ、96.7%、91.7%、86.4%であった。A1歳6カ月児健診、3歳児健診の回答率はそれぞれ84%、75%であり、麻疹ワクチン接種率はそれぞれ73%、90%であった。保育園入所中である事、母が25歳以下である事等は、麻疹罹患率や麻疹ワクチン接種率と有意に関連した。児のワクチン接種決定の大半は保護者自身が行っており、1歳6ヶ月健診時の未接種理由の42.3%が予定時の体調の悪さを、32.2%が理由は特にない、と答えた。
考察 麻疹流行抑制のためには、第一に現行体制における接種年齢内のワクチン接種率を引き上げること、その際、母親年齢別のアプローチ、保育園等の生活形態への考慮が重要であることが明らかとなった。また出生年グループ毎にワクチンの有効率が低下した結果は、いずれわが国においても複数回接種を検討する必要性を示唆しているかもしれない。また、成人麻疹について、30歳までの女性が全体の50.6%を占めたことは注目される。