「こどもと喘息フォーラム」メーリングリストの運用について

西藤こどもクリニック 西藤成雄
■名称 「JIMA第2回会員研究会」
■日時 2000年5月20日(土) 14:00〜17:00
■場所 カンダパンセ パンセホール 801号室


抄録

 当院では喘息のお子さんを持つ家族や喘息患者の交流と学習を目的として「こどもと喘息フォーラム」と題したメーリングリスト(M L)を運営している。対象は喘息のお子さんの家族や医師をはじめ、喘息を持つ子どもに接する機会のある方である。

 このMLの特徴は、投稿内容をWebページとして公開し検索エンジンを稼動させML参加者以外に閲覧を可能としている事があげられる。こうしたMLの投稿内容を公開する手法は、コンピューターやソフトウエアなどの技術系のMLを始めとして今日ではよく行われている手法である。

 MLでの患者やその家族同志やまたは医療関係者との間で、病態や薬剤に対する知識、医療機関や学校・家庭での対応など、喘息を克服していく上で有益な情報が取り交わされている。その交信はMLに参加していない患者さんにとっても大変素晴らしい情報資源であり、インターネット上で公開し喘息で悩んでいる方とも共有財産の構築を目指した。

 ところでプライベートで深刻な話題を扱う医療関係のMLでは、交信内容を公開するのは珍しい試みではないかと考えている。特に危惧されるのは患者さんのプライバシーの漏洩である。そのためMLではハンドルネームを使用する、Webページでは投稿した方の電子メールアドレスが表示されないなどの工夫を凝らした。

 しかしながら、投稿のWeb公開は喘息患児が日常のどういった局面で困難に直面しているかなど、閲覧者に知ってもらう機会を作り、長期的にはML参加者を含めた喘息患者にとってもメリットを与えるかもしれない。また本名や電子メールアドレスを伏せるなどの対応は、投稿をご覧になった方からの励ましのメッセージの到達を妨げるなど、メリットが上回るものかどうか検討も必要である。

 Web公開によるMLの運営は始めてまだ2ヶ月余りであるが、MLの投稿はアクセスログなどから、予想通り実に多数の方が閲覧している事が分かる。特に検索エンジンのログファイルは、どういったキーワードで検索したかが記録されており、それはすなわち喘息患者が今日求めている情報を反映していると考えられ、これは大変興味深い。

 患者のプライバシーの保護を求める声が高まる中で、患者一人一人のわずかな体験が、Web上で多くの方の共有財産として構築され大勢の利益を生み出す可能性があることも注目すべきである。研究会ではこうした方法で患者を中心にML運営する上での問題点や展望について現時点での考案を述べたい。


発表スライド

「こどもと喘息フォーラム」MLの運用について


学会発表
 西藤こどもクリニック